クッキーレス時代において、マーケティング担当者が把握すべき本質的なリスクとは?
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クッキーレス時代において、マーケティング担当者が把握すべき本質的なリスクとは?

Nielsen Digital Shiro Takagi

昨年から多くのマーケティング担当者が、サードパーティークッキーやモバイル広告IDといったデジタル上の識別子に依存したコミュニケーションからどのように脱却するか、という課題に直面しています。広告主企業各社との会話でも、クッキーレス時代においてどのようにターゲティングしていくか、いろいろな手法を試しているという声をよく伺います。その一方で、正しくターゲティングできていないことや、正しく効果測定できていないためにどのような具体的な影響が出ているのかを伺うと、詳細には把握できていないという答えが散見されます。これからのクッキーレス時代に備えて既に様々な手法を試しているところだとは思いますが、これからどのようなリスクにさらされるのかを正確に把握できて、初めて適切な対策を検討することができるのではないでしょうか。そこで今回は、クッキーレス時代においてマーケティング担当者が直面する具体的なリスクについてご紹介します。

本当のリスクは、無駄な広告出稿が増えることではない

クッキーレスによる影響として第一に注目されるのは、正しくターゲティングできない点でしょう。これまでは、ピンポイントで狙った最適なターゲットに対して広告を届けることができるという意識でデジタル広告を活用してきた広告主も多く、それができないケースがあるということは大きな問題になります。そのため、これまでと同等、もしくはできる限り精度を維持しながらターゲティングをして広告を配信していく代替手段を探して、試行錯誤していくのは当然の流れと言えます。二番目に注目されているのは、クッキーレスにより配信結果を把握するための様々な測定が正しくできなくなるケースがあるという点でしょう。例えば、今まではフリークエンシーキャップをかけて狙い通りに広告を配信できているか、測定結果をもとに判断していました。しかし、「適切な回数で広告を配信できているか」、「どれだけリーチを伸ばすことができているか」、と言った基本的なデータでさえも、従来のデジタル識別子に依存した方法では正しく把握することが難しくなってきました。

では、正しくターゲティングできなかったとしたら/正しく効果測定できなかったとしたら、どのような問題が起きるのでしょうか?まず初めに思い浮かぶのは、「効率」という問題でしょう。狙っていたターゲットに配信できないということは、「狙っていない人たち」に対して広告が配信され、無駄なコストが増えてしまいます。また、想定以上にフリークエンシーが増えてしまうと、狙っていた人数にリーチするために想定以上の予算が必要になってしまいます。どちらも、無駄なインプレッションに広告費を払っていくことになるため、大きな問題といえます。しかし、狙ったターゲットに適切な回数広告が配信できないということによるリスクは、効率の低下だけではありません。そもそも広告の目的は、ターゲットに商品を認知してもらうことや商品の特性を理解してもらうこと、好きになってもらうことなど、短期的および中長期的に売上に寄与する態度変容を創り出すことにあります。しかし、クッキーレスで適切に広告が配信できなくなると、狙っているターゲットに期待した態度変容を起こせなくなるというリスクも発生します。クッキーレスの問題では効率が下がる点が注目されがちですが、広告の目的を考えると期待した効果を出せないことこそ、本質的な問題と言えるでしょう。

クッキーレスによる本質的な問題は、期待した効果が出せないこと

適切な効果が出せなくなるケースが発生する要因は、効率の低下同様、「狙っているターゲットに広告が配信できない」ことと、「適切な回数で広告を配信できない」ことです。

狙っているターゲットに広告が見てもらえなくても、ターゲット外の人が態度変容を起こして、その商品を買うこともあるでしょう。しかし、一般的には、多くのマーケティング担当者はターゲットを設定し、ターゲットユーザーに対する様々な調査結果から得られたユーザーが抱える課題やニーズに合わせて、或いは共感を引き起こす要素を組み入れてクリエイティブを作成します。そのため、例えば、若年女性向けの商品であれば、若い女性が登場し、生活の中における課題や共感等を伝えるストーリー構成で、その商品の価値を伝えていきます。しかし、そのクリエイティブが、高齢の女性に多く配信されてしまっていては、高齢の女性にとっては自分ごと化できないために、必要な商品として認識してもらえず、購入につながらないケースも考えられます。そのため、ターゲットを定めてクリエイティブを作成した広告がターゲット以外に配信された場合は、狙ったような効果を得られない可能性があるでしょう。だからこそ、広告がターゲットに届いたかどうかを測定し、できていない場合は配信方法を改善することで初めて効果を出すことが期待出来るようになります。

また、適切な回数で広告が配信できなくても、少し多く配信された程度であれば、問題ないでしょう。しかし、広告のフリークエンシーについても、過去の調査結果等を参考に、例えば、動画広告であれば3回程度広告をみてもらうと、期待している効果が得られる、といったプランニングを立てて配信しているでしょう。そのため、仮に平均フリークエンシーが1回程度となっていたら、期待していた態度変容が起きないケースが多くなるかもしれません。また、逆に平均フリークエンシーが20回など、過剰に広告を配信している場合、弊社の過去の調査では、そのブランドのことを嫌いになってしまう消費者が出てくることがわかっています。つまり、プランニングどおりのフリークエンシーで広告が配信できないと、狙った効果を得られないケースや、場合よっては負の効果が出てしまうケースもあるのです。

最後に

クッキーレスによるリスクは、効率的に広告を配信するという視点からみて、無駄になる出稿費が増えてしまうという点に注目しがちですが、今回ご紹介したように効果的に広告を配信するという点から見て、期待していた効果が得られないという点こそ本質的な問題として認識し、対策を取っていくことがマーケティング担当者には求められます。そのためにも、広告の本来の目的に立ち返り、適切なターゲットに対して適切なコミュニケーションを取ることができているのかを、正しく把握することが重要であると言えます。これからのクッキーレス時代においては、マーケティング担当者はクッキーレスに対応した測定データをもとにプランニングを行い、効果を測定し、改善をはかっていくことで、効率的で効果的なコミュニケーションをとることができるでしょう。